パトリック・ロジェさんは、2000年にMOFを獲得して、パリ市郊外ソー市に初めてのショコラティエをオープンして以来、他のショコラティエとは一線を画す新しいチョコレートの世界を次々と創造してきました。2008年に、ソー市に庭付きの700平米ものアトリエをオープンしたのを皮切りに、活動はさらにダイナミックに。特に、店のショーウィンドーに飾るチョコレートの彫刻には目を見張るものがあります。例えば、2011年の“大河を泳ぐカバ”は、長さ約8m、幅2.4mという巨大な作品で、自然の偉大さを表現しています。
そんなチョコレートの彫刻の世界を伝えることをテーマとした新しいブティックを2012年11月15日、伝説的なレストラン“アラン・サンドランス”の斜め前という素晴らしい立地にオープンしました。インテリアもサプライズ。アルミニウムの筒とチョコレートというモダンな組み合わせ、そしてシンボルカラーのグリーンを控えめに配し、現代的な世界観が表現されています。
インテリアを手掛けたのはAGENCE X-TU。その創始者の1人であるアヌーク・ルジャンドルさんは、「ロジェさんのアトリエを訪れて、インテリアのイマジネーションが広がりました」と言います。まず表現したかったのは、そのアトリエを訪れた時に、チョコレートの何ともいえない香りに包まれたときに感じた、幸せだったといいます。ロジェさんが彫刻を作る時には、筒状のチョコレートを幾つも組み合わせて大きな塊にし、それを削って、作りたい形の土台としています。ルジャンドルさんは、そのロジェさんの仕事が非常に印象に残ったそうで、筒状のモチーフを使って、店を表現したらとひらめいたそうです。
そして出来上がった、筒状のアルミニウムを大胆に組み合わせて、ドーム状に仕上げた天井などは、未来的な演出。アルミニウムの筒は天井以外にもあちこちに配していて、それとチョコレートで作った彫刻とが渾然一体としています。
ロジェさんは、この店を通して、“チョコレートとアート”という新しい世界に踏み出したそうです。地下には、“ここでチョコレートを掘り当てた”という名まえをつけた作品を展示していて、まるでモダンアートのよう。
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