ゴダールの目の色と同じ色の済んだブルーを基調にしたインテリアに、大理石のショーケース。その上に、モンブラン、パリブレスト、ピュイ・ダムール、サントノーレ、レモンタルトなどのクラシック菓子がずらりと並んでいます。伝統菓子だけですが、品よく作られたその様子は、反対にとてもモダンに見えます。
それに例えばクラシックといっても、フォレ・ノワールなら、ジェノワーズの量感よりクリームの方をふんだんに仕込んだ軽やかな口溶けであり、イチゴのタルトなら、平らではなく舟形に仕上げて愛らしく見せているなど、エレガンスが溢れています。一つ一つのお菓子と向き合って、きちんと丁寧に創り上げているからこその仕上がりだと思います。
そして、店の中に、伝統を継承していきたいというゴダールの気持ちがあちこちに散りばめられているのも、この店の個性でしょう。
例えば、店の日除けには、“de père en fils depuis 1955(1955年より父から息子へ)”と記されています。ゴダールはロレーヌ地方出身で、父親もパティシエ。パティスリーを営んでいた家族に生まれました。そんな父親のエスプリを引き継ぐような店にしたいという真摯な思いと先代へのリスペクトが詰まっており、その昔に実家の店で使っていたレジをインテリアとして飾ったりします。
あとは何と言ってもMussipontain(ミュシポンタン)でしょうか。おそらくパリのパティスリーではここでしか出合うことのできないお菓子です。ゴダールの生まれた町の名前は正確にはPont à Moussonというのですが、その住民をミュシポンタンと呼ぶのです。パリに住む人のことをパリジャンと呼ぶように。
そしてその町の銘菓がミュシポンタンです。アーモンド風味のメレンゲ生地を層にして、そこにこってりとしたバニラ風味のクリームを挟んでアーモンドで飾り付けたもの。さくさくとしたメレンゲ生地に、質のよい滑らかなクリームがなじむ、その心地良いコントラストと切れ味が美しいのと、周りに散らしたアーモンドが、香ばしい食感をプラスしてくれます。
シンプルだけれど、一つ一つの質のよい仕上がり、風味、口溶けが、全体のハーモニーを創り上げる。シンプルなものを作るのは難しいと言われますが、ゴダールはその本質をしっかりと掴んで実践しています。
詳細
住所:22 rue des Martyrs 75009 Paris
電話:01.71.18.24.70
営業時間:10:00〜20:00(火〜金)、9:00〜20:00(土)、9:00〜14:00(日)
Web:http://www.sebastiengaudard.fr/
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