パリ7区、ボン・マルシェ百貨店から西の方向にセーヴル通りを歩いて7分ほど、静かな小道ルスレ通りに和菓子店「和楽」がオープンしました。大きなガラス窓で店内が見えるその店は、石膏で作った土壁のような落ち着いた壁に木の家具と仕切りで、日本の自然観が伝わってくるような和の造りです。こぢんまりとした空間はとても風通しよく、空気が流れていて透明感があります。フランス版ミシュランガイドで、現在たった一つ和食店として星を獲得する(1ツ星)「あい田」ですが、そのオーナーかつ職人である相田康次さんが、先見の明を持ってオープンした和菓子店といえるでしょう。2005年に「あい田」をオープンして6年目の新たな挑戦となりました。
和菓子職人を務めるのは、1978年生まれの村田崇徳さん。村田さんはもともと和菓子職人の息子さんで、京都で修業をしましたが、当時パリに住んでいたフランス菓子職人である兄の影響も受けて、世界を見てみたいとワーキングホリデーを取得し、2005年にパリにやってきました。その当初、働き先を探していたところ、たまたま門を叩いたのが「あい田」。しかもその日は、当店のオープン日だったそうです。それからデザート部門を担当することに。2年半後日本に戻り、実家を手伝っていましたが、「和楽」のオープンのため、パリに呼び戻されたのだという、深い縁を感じます。
「お客さまに、背景を想像していただけるような和菓子作りを目指しています」と村田さん。日本ならではの季節を表す自然の姿を、お菓子の中に託します。店に伺ったときはちょうど9月9日。重陽(菊に長寿を祈る日)で、菊の節句を愛でる“菊の着綿”を表現した和菓子“きせわた”を出していました。この店の特徴は、カウンター席があって、お客さまの前でお菓子を制作するということでしょう。日本から村田さん自身が持参した和菓子の道具が取り出され、一つ一つ和菓子を制作するその仕草を間近で見ながら、さまざまな質問を投げかけることができるのは、こうしたカウンターのスタイルならではでしょう。
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