
中世の面影が残るのんびりしたスピランベルト町。町のエントランスには14世紀建造 の「Torrione Mediovale」(トリオーネ・メディオヴァーレ)。この塔に向かって右の黄色の建物が「伝統バルサミコ酢美術館」です。
Modena(モデナ)の郊外、南東20km程に、Spilamberto(スピランベルト)という小さな町があります。古い静かな田舎町ですが、ここに世界に知られる「伝統バルサミコ酢博物館」があります。17世紀建造の古いパラッツオの中を美術館に改装してあって、最上階の屋根裏スペースにバルサミコ酢の醸造スペースがあり、年代物の樽が置かれています。

「伝統バルサミコ酢美術館」の屋根裏階にあるバルサミコ酢の醸造所。”モスト・コット”(ぶどう果汁を煮詰めたもの)を大きい樽から小さい樽に徐々に移し替えて醸造を重ね ます。スローフード協会や有名レストラン専用の樽を見つけました。
モデナの一般家庭でも自宅の屋根裏に自家使用の樽を置いてバルサミコ酢を作っているのを見た事がありますが、日常の食卓にかかせない調味料になっているようです。もちろん、醸造期間が10年、25年ものにもなる「伝統バルサミコ酢」と呼ばれる酢は、家庭で頻繁に使うというものではありませんが、ここぞという料理の仕上げや、プロには重宝されています。

(左)モデナ人に聞いても、苺はバルサミコ酢と相性が良いとされ、ジェラートにも合わせる典型的な食し方です。さっぱりとしていながら深みがでるので食後のデザートに重くなりません。/(右)ミラノのジェラートショップにて、バルサミコ酢クリームをトッピング。これはバニラ風味でしたが、さまざまな組み合わせが楽しめそうですね。
元々は中世のエステ家の宮廷で、薬用や貴賓への贈答用にされた貴重な酢ですが、現在は、等級にもよるものの、低価格帯カテゴリーの製品がスーパーマーケットでも購入でき、イタリア全土に普及しています。肉料理、ハム・サラミ、パルメザンチーズ、魚料理に使われるだけでなく、デザートにもぴったり。苺にもジェラートにも良く合い、簡単でひと手間かけた感じになって風味もアップします。町のジェラート店でもトッピングしてくれるところを見かけます(これは「伝統バルサミコ酢」ではなく、一般的なバルサミコ酢含有のクリームソースです)。こうしてイタリアでは、気軽にバルサミコ酢特有の甘酸っぱくて深い風味を楽しんでいます。
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