京都市上京区今出川の路地にひっそり佇む「UCHU wagashi」は、2010年12月に誕生した京都生まれの和菓子ブランドです。オーナー&プロデューサーの木本勝也さんは、歴史ある京都で100年後に新しい文化になるような和菓子づくりを目指し、店を構えました。
「UCHU wagashiのテーマは、人をわくわくさせたり、幸せにする和菓子。お客様を迎える準備をするひとときやおもてなしの心を大切にしてほしい」と木本さん。京都出身の木本さんは、京都の文化に基づいたもの、積み重なっていく文化やこれからも残っていくであろうものを落雁で表現しています。
古い町家を改装した、落ち着いた雰囲気の店内に入り、緩やかなスロープになったエントランスを進むと、手入れの行き届いた小さな坪庭が目に飛び込んできます。モダンに剪定された木々を横目に、ショーケースに辿り着くと、そこには洗練された落雁が。
定番の形「おちょぼ」を生かし、チャイやジャスミン、ほうじ茶、抹茶など、お茶の味と香りを1粒1粒に閉じ込めた「ochobo」をはじめ、動物の形をした「animal」、組み合わせによってさまざまな形にデザインできる「drawing」、京都の風景がデザインされた「京都ものがたり」など、どの商品も今の時代にふさわしい新しいデザインと発想で創られています。
「伝統的な和菓子の多くは、自然や季節などをモチーフに作られ、単に食べるだけではなく“見て感じるお菓子”として、長く親しまれ、発展してきました。お茶席で愉しまれているお菓子をもっと身近に親しんでほしい、という気持ちと、私どもの落雁を食べて、昔ながらの伝統美を受け継ぐ造形の落雁に触れ、和の文化に興味を持っていただけたら……。」
そんな思いでデザインした落雁の中で、特に「UCHU wagashi」を代表する商品が「drawing」。円型を4つにカットした形の6色のピースが計20個入っていて、パズルのように自分でピースを組み合わせて和菓子をデザインできます。絵を描くようにイメージを膨らませば、世界がどんどん広がり、いただく前から楽しめる、新しい発想の和菓子です。食べてくれる人を思い浮かべながら、花や魚、鳥など、自分の発想でデザイン。お客様をもてなすために準備する時間も大切にしてほしい、という思いが込められたお菓子なのです。
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