むかしむかし、メキシコ・アステカの国から遠くヨーロッパの国スペインへ伝わった「ショコラトル」という飲み物がありました。カカオ豆から生まれたこの不思議な飲み物は、さまざまな国の多くの人々の努力や情熱によって、「ココア」となり、広く飲み親しまれるようになりました。
大阪・心斎橋にある「アカイトリ」は1972年に創業して以来、約40年間愛され続けているココア専門店です。
レトロなビルの階段を上ってお店のドアを開けた瞬間、ココアの香りに包まれます。店内には、ココアドリンクの缶やパッケージなど、ココアやチョコレートに関する雑貨がいっぱい。オーナーの村田紀美代さんが少しずつ楽しみながら、自然とコレクションしたものだそう。壁面にもココアに関するポスターや写真などがディスプレイされていて、まるでココアギャラリーのよう。
そして、オーナー手づくりのテーブルクロスやクッションなど、ノスタルジックで乙女チックな雰囲気。ほっとする飲み物・ココアに似合う空間です。
「創業当時、コーヒーや紅茶の専門店はあったけれど、ココアの専門店はなかったんです。ココアも、コーヒーや紅茶と同様に、大人の飲み物としておいしいものを飲んでもらいたいな、と思い始めたんです」と村田さん。
ノスタルジックな空間で楽しめるのは、種類豊富なココアドリンク。ベーシックなココアをはじめ、オレンジキュラソー入り、ピーナッツ入り、マシュマロを浮かべたもの、ショウガ入りなど、オリジナリティ溢れるココアが勢揃い。
そのほか、お抹茶のように茶筅でたてた「ココアおうす」、赤唐辛子入りなどの珍しいココアも、スポット的に提供されることもあるのだとか。これらのメニューは、すべて村田さんとマネージャーである菅田昌宏さんが考えたメニュー。
「図書館に行って、さまざまな本を読んで調べたり。今のようにインターネットで情報を集めることも難しかったので、情報収集は大変でした」と村田さん。今でこそ、関西にもショコラトリーも増えていますが、創業当時はチョコレート専門店もまだまだ珍しい時代。
「カカオポッドにカカオ豆が入っていることでさえ、ご存知の方は少なかったように思います」。そんな時代に、いち早くマレーシアのプランテーションに足を運び、カカオの生産現場も見学されたといいます。
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