どっしりとした石造りの建物の中に入ると、落ち着きのあるクリーム色と上品なダークブラウンの壁に囲まれたモダンなインテリア。入ってすぐのカウンターは、パンやペイストリー、ケーキを求めに、たくさんの人が常に行列をなしています。 古い建物特有の、細長い店内の奥には35席もあるゆったりとしたイートインスペース。午前中は朝食メニューを、ランチタイムにはキッシュ、サンドウィッチ、ポテトやエビの詰まったクロケットやピザなど軽食も食べられます。午後はひとつひとつ丹念に作られた自慢のスイーツをコーヒーとともに楽しむ客であふれ、一日中大にぎわいのカフェです。
上階のベーカリーでは10人もの職人が毎日ここでパンを焼き、ケーキをつくります。これらは朝早くから販売され、売り切れ次第終了。常に15種類以上のパンを常備し、シーズンごとにメニューの変わる50種類ものペイストリーやケーキは大きなショーケースに陳列され、あれもこれもと買いたくなるくらい香ばしく、美味しそうです。 定評のある朝食セットは、コーヒー、オレンジジュース、サクサクした作り立てのペイストリー1種に3種のパン、これにスライスされたチーズ、ハム、手作りジャムとバター、ヌテラ(ヘーゼルナッツペースト)が添えられており、たっぷりのボリュームなのに8.5ユーロとリーズナブル。朝食向きのフレッシュなチーズ、濃厚で上質なハム、イチゴを惜しみなく丸ごと使った贅沢な手作りジャムなどが添えられ、パン以外のアイテムも充実しており、オーナーのこだわりが伺えます。ペイストリーやパンは好みで選ぶことが可能です。 この店のスペシャリティは、ここリエージュの伝統菓子「タルト・オ・リ」というライスパイ。薄いパン生地のクラストに艶のあるフィリング、こんがりとした焼き色のパイは一見とても濃密でリッチな印象ですが、食べてみると甘すぎずまろやかでクリーミー。フレッシュなバニラビーンズが効いています。 このタルト・オ・リ、もともとはリエージュやオランダ南部で食されている素朴な家庭菓子で、沸騰した牛乳に米とバニラを加え、米が柔らかくなったところで砂糖を加えて寝かせ、後に溶き卵でコーティングし焼いたシンプルなもの。簡素なレシピなゆえ、美味しく作るには独自のテクニックと素材の良さが必須です。 通常のタルト・オ・リは米の粒が少し残っていたりしますが、ここストフェルズのものは中のカスタードがなめらかで軽くふわふわとしており、繊細さ、上品さが備わっています。伝統にアレンジを加え、一段上質のクオリティを備えたストフェルズのタルト・オ・リを求めて遠方から足を運ぶ客も少なくないとか。 オランダとの国境に近いリエージュにあるため、ストフェルズでは、このライスパイの他、北ヨーロッパの国々のデザートに多く使われるリンゴを材料にしたデザートと、同時にフランスの影響を受けた洗練されたパティスリーやケーキの両方を揃えています。
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