「早くしなさい!」「何回言わせるの?」「ほら、こうすればいいのに!」
——毎日、こんな言葉を子どもにかけていませんか?
親として子どもを思うがゆえに、つい手も口も出してしまう。けれど、それが実は子どもの心と脳の成長を妨げてしまうことがあるのです。今回は、心理学・脳科学・教育の専門家たちの意見をもとに、「なぜ“見守る力”が大切なのか?」「どうすれば見守れるのか?」をわかりやすく解説します。
「やりすぎ」「言いすぎ」が起こる背景とは?
子どもを大切に思う親心が、“過干渉”を生んでしまう。臨床心理士の渡辺弥生先生は、「過干渉の多くは“失敗させたくない”という親の不安から来ている」と指摘します。
たとえば――
・忘れ物をしないように全部チェック
・宿題の内容に口出しして答えまで言ってしまう
・先回りしてトラブルを防ごうとする
これらは一見「親切」ですが、子どもが考える機会、自分でやってみる機会を奪っているかもしれません。
「自分で考える脳」を育てるには?
脳科学者の篠原菊紀先生によると、「子どもが自分で選び、行動し、失敗しながら学ぶときに、脳の前頭前野が最も活発に働く」とのこと。前頭前野は「思考力」「判断力」「感情コントロール」をつかさどる重要な部位です。つまり、“親が見守る”ことでこそ、脳は育つのです。
「見守る」ってどういうこと?
「見守る」とは、ただ放っておくことではありません。それは、「信じて待つ」「必要なときだけ手を差し伸べる」こと。教育学者の汐見稔幸先生は、「子どもが困ってから助ける方が、成長の機会になる」と語ります。転ばせないようにするより、「転んでも起き上がれる力」を育てる。それが見守りの本質です。
今日からできる!見守る親になる5つのポイント
1. 指示ではなく、問いかけをする
「今すぐやって!」ではなく、「今、何をしたらいいと思う?」と聞いてみましょう。自分で考えるクセがつきます。
2. 小さな選択肢を子どもに任せる
服を選ぶ、今日のデザートを選ぶ、遊ぶ場所を決める。「自分で選んだ」が自信になります。
3. 失敗を否定しない
「だから言ったでしょ!」はNG。「うまくいかなかったね。どうしようか?」と、一緒に考えるスタンスで。
4. 子どもの“沈黙”を受け止める
話さない=反抗ではないことも。考えている最中かもしれません。急かさず、「大丈夫、待ってるよ」という安心感を。
5. 見守る覚悟を持つ
口を出したくなったら、深呼吸。手を出したくなったら、1分見守る。「信じる」は最強のサポートです。
見守ることは「愛のかたち」
見守るというのは、信じて待つ愛情表現。つい口出ししてしまったときも、落ち込まなくて大丈夫です。大切なのは、「気づいたら、ちょっと引いてみる」こと。子どもは、信じてくれる大人がそばにいることで、ぐんと伸びていきます。
まとめ:親は「縁の下の力持ち」でいい
子どもが失敗したとき、悲しんだとき、助けてほしいとき、そっと背中を支えてくれる存在こそが親。その姿勢が、子どもの“心”と“脳”を育てます。焦らなくていい。比べなくていい。今日から「信じて見守る子育て」、はじめてみませんか?
参考文献・情報元
渡辺弥生『感情的にならない子育て』/篠原菊紀『子どもの脳を育てる親の習慣』/汐見稔幸『子どもが育つ“見守る”子育て』/開一夫『子どもは子どものやり方で育つ』