現代の子どもは、しっかり食べていても栄養不足になっている恐れもあるといわれています。「そういえばうちの子、あまり野菜を食べたがらないのよね」と不安に思ったなら、今回の内容は必見! 病院管理栄養士による野菜の栄養を逃さない食べ方テクニックとともに、栄養を無駄なくお得に摂取できるスープレシピをご紹介します。
■子どもの8割に隠れ栄養失調のリスク
先日、日本スープ協会がスープセミナーを開催。そこでは東京慈恵会医科大学附属病院 栄養部で管理栄養士として活躍する濱裕宣先生が登壇していました。濱先生は、大ヒット本『その調理、9割の栄養捨ててます!』の著者でもあり、栄養を無駄にせず賢く食べる方法に詳しい方です。
講演では、栄養不足の現代人に向け、栄養を効率よく吸収するための方法が紹介されたなか、子どもの栄養不足についての指摘もありました。
- 8割の子どもに隠れ栄養失調のリスク!?
ハウス食品が2018年に実施したアンケート調査結果によれば、「新型栄養失調」のリスクがある子どもの割合が83%にも上っています。
新型栄養失調とは、食カロリーは足りていても、ビタミン・ミネラル・食物繊維などの必要な栄養素が不足している状態のこと。
濱先生は、その原因としてパンやご飯だけなどの単品だけの食事や、子どもが嫌いなものを抜いた食事を挙げています。確かに野菜が十分でない「子ども好みのメニュー」を作ってしまいがちですよね。
■栄養を無駄にしない料理法
濱先生によれば、大人も子どもも、毎日しっかり食べているようで、栄養ロスの可能性があるそう。保存の仕方や下処理の過程、調理の仕方、食べ方によって栄養ロスになっているかもしれません。
そこで濱先生直伝の栄養を無駄にしないテクニックを野菜の種類別にご紹介します。
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白菜
白菜は外側よりも中心部から食べると14倍も栄養がお得なのだそう。外側の葉部分から使い、後日、中心の白い部分を食べていませんか? 実はその食べ方、栄養を無駄にしているというのです。なぜなら、野菜は収穫後も成長し続けており、外側から白菜の中心にある「生長点」という部分に向かって養分が送られ続けているので、日が経つにつれて外側の旨みや栄養が抜けてしまうからです。
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ピーマン
ピーマンの苦み成分はポリフェノール「クエルシトリン」に血液サラサラ効果の香気成分「ピラジン」が加わってできたもの。無駄にせずに摂取するには、横に切る(輪切りにする)のではなく縦に切るのが鉄則! 筋に沿って縦に切ると苦み成分はそのまま保たれ、逆に横に切ると苦み成分が外に出ていってしまいます。苦いのが苦手な子どもにはあえて横切りに、それ以外は縦切りにすると良さそうですね。
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ニンジン
ニンジンのβカロテンは、摂取すると体内で免疫やアンチエイジングに欠かせないビタミンAに変化する貴重な栄養素。油と一緒にとったほうが体内への吸収率が上がるのだそう。ニンジンをオイル煮にして料理に使うと賢く栄養を摂取できます。
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ほうれん草
ほうれん草には、ビタミンCやβカロテン、鉄、マグネシウム、亜鉛などの栄養がたっぷり! でも、その栄養を残さず摂取するには、アク抜きなどのゆでた後に切るのが鉄則。ゆでている間に、切り口からビタミンCがどんどん流れ出てしまうのだとか。
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大根
大根は、加熱し過ぎに注意な野菜。大根に含まれる消化酵素の「ジアスターゼ」は加熱に弱く、50-70度ほどで働きを失ってしまうといわれているのです。脂質を分解する酵素「リパーゼ」も同様に消滅してしまいます。ビタミンCも煮込むと流れ出てしまうので、おでんの大根はほぼ栄養なし。栄養をしっかり摂るには皮付きのまま大根おろしにして生のまま食べるのがおすすめです。
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きのこ
えのきだけ、ぶなしめじ、まいたけがなどのきのこ類に含まれるグアニル酸やアミノ酸、アスパラギン酸などは、旨みを出すとともに、生活習慣病予防や疲労回復に効果が期待できます。
きのこは冷凍するとそれらの成分が3倍から4.5倍にアップ。冷凍きのこをそのまま調理に使うと良いそうですよ。
■栄養を捨てずに食べる!スープレシピ3つ
続いては、子どもにも食べさせたい、栄養を逃さず使うスープレシピを3つご紹介! 同じスープセミナーに登壇していたスープ作家の有賀薫さん考案のレシピです。
1.「冷凍きのことほうれんそうのポタージュ」
【材料(1人分)】
- ・味の素「クノール®︎ カップスープ」3種のなめらかチーズとけこむほうれん草のポタージュ 1袋
- ・冷凍ミックスきのこ 40~50g
- (ここでは、ぶなしめじ、まいたけ、えのき)
- ・牛乳:1/4カップ
- ・塩:少々
【作り方】
※冷凍きのこは、食べやすいサイズにして、冷凍しておく。
- 冷凍きのこと牛乳1/4カップを耐熱カップに入れ、塩少々を振る。
- 600Wのレンジに1分半~2分かけ、様子を見ながらあたためる。
- 「ほうれんそうのポタージュ」1袋を加え、湯100mlを注いでかき混ぜる。
2.「かぼちゃとにんじんの和風スープ」
【材料(2~3人分)】
- ・キューピー「キューピー 3分クッキング 野菜をたべよう! 和風スープの素」 1袋
- ・ニンジン 1/3本 60g
- ・かぼちゃ 100g
- ・はくさい内側の葉 60g
- ・油揚げ 1/3枚
- ・ごま油 小さじ2
- ・水 カップ2と1/2
- ・あれば ごま 少々
【作り方】
- 種とワタをとったかぼちゃとにんじんを薄い輪切りにする皮付きのまま。
白菜はざく切り。油揚げは細切りにする。 - ニンジン、ごま油、水カップ1/4を鍋に入れ、ふたをして中火にかける。
煮立って5分ほどしたらかぼちゃとはくさいを鍋に入れ、2と1/2カップの水を加えて10分ほど、野菜が柔らかくなるまで煮る。 - 和風スープの素と油揚げを加えてさらに2~3分煮込み、味を見て塩分量外でととのえる。好みでごまをふってもよい。
3.「にんにくチキンチャウダー」
濱先生によれば、大麦をゆでたゆで麦なら食物繊維が多く摂取しやすくなるそう。スープをかけて美味しく食べやすくしています。
【材料】(1人分)
- ・ハウス食品「北海道クリーミースープの素」 大さじ3
- ・鶏もも肉 1枚(350g)
- ・キャベツの葉 3枚
- ・にんにく 3~4片(1/2株)
- ・オリーブオイル 大さじ1
- ・塩、胡椒 少々
- ・ゆで麦 80g
- ・バター 10g
- ・(好みで)レモン
【作り方】
- にんにくは皮をむいてばらしておく、キャベツは手で食べやすい大きさにちぎる。鶏もも肉は6つぐらいに大きめにカットして塩をふる。
- 厚手の鍋にオリーブオイルを熱し、鶏もも肉を 皮目を下にしてこんがり焼く。焼き目がついたら裏返し、水1カップとにんにく、キャベツを加えてふたをして10分蒸し煮する。ふたをあけ、にんにくをヘラなどでつぶす。
- 水3/4カップと牛乳を1/2カップ加え、スープの素大さじ3を加える。ゆで麦にバターを混ぜたものにかけてできあがり。胡椒をふる。好みでレモンの串切りを添えても。
子どもの隠れ栄養失調が不安になっている方のほか、家族の栄養をもう一度見直したい方にもおすすめの情報でした。ぜひ参考にしてみてくださいね。
【プロフィール】
濱 裕宣(はま ひろのぶ)先生
東京慈恵会医科大学附属病院 栄養部課長
健康と栄養バランスを大事に、日常生活の中で活かせる食事ノウハウの普及を目指し、患者の立場に立った食生活向上指導にあたっている。
大ヒットのレシピ本『その調理、9割の栄養捨ててます!』(世界文化社)や、『慈恵大学病院のおいしい大麦レシピ』(出版文化社)など多数の栄養・健康のレシピ本にかかわる。『世界一受けたい授業』(日本テレビ)、『ヒルナンデス』(日本テレビ)などテレビ出演や講演でも活躍。
有賀 薫(ありが かおる)さん
スープ作家。家族の朝食をきっかけに10年間作り続けたスープをもとに、雑誌、ウェブ、テレビなどでレシピや暮らしのアイデアを発信。『朝10分でできる スープ弁当』(マガジンハウス)で、2020年料理レシピ本大賞入賞。