そして、1955年。ブリジット・バルドーを世界的なセックスシンボルとして有名にした映画『素直な悪女』のロケが、サントロペの町で行われミカさんはその撮影中のケータリングを担当することになり、そしてデザートにその「クリーム・ガトー」を出しました。 ふかふかとしたブリオッシュにカスタード風クリームをたっぷりといれたそのお菓子は、映画『素直な悪女』の雰囲気にもうってつけの、官能的でグルマンな味わいだったのでしょう。撮影班からひときわ人気を集めて、毎回注文が入っていたそうです。もちろんブリジット・バルドー本人もそのお菓子を気に入って、ミカさんにちょっとした助言をします。「このデザートに名前をつけてあげないといけないわね。『サントロペのタルト』ではどうかしら?」 それからミカさんは、「ラ・タルト・トロペジエンヌ(サントロペのタルト)」と名前を決め、商標登録も済ませたのでした。 現在のオーナー、アルベール・デュフレーヌさんは30年ほど前からミカさんとともに働き、ミカさんの跡を引き継ぎました。「ラ・タルト・トロペジエンヌ」のレシピももちろん引き継いでいますが、シンプルなレシピのなかにも、ちょっとしたシークレットがあるとのことで今でも門外不出だそう。
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