(左)ノスタルジックな店構え。/(右)オーナーの森百合子さん。店舗を構える以前は、大阪での移動販売やカフェやショップでのイベントでおはぎを販売していたそう。
岡町駅から商店街のアーケードを抜けると、通りに面した小さな間口のお店。おはぎ屋さん「森のおはぎ」は2010年7月に誕生しました。黒いトタン壁に看板、そして古い水屋(昔の食器棚)を使用した棚や、1枚1枚手作りのガラスがはめ込まれたアンティークの格子戸に筆で書かれた手書きのメニューなど、レトロで懐かしい雰囲気です。
ご年配の方はもちろん、若い方も、ふと足を止めてみたくなるようなノスタルジックなムードが漂っています。棚の上にはガラス蓋の小さな木箱が4つ。それぞれの木箱の中には、定番と季節のおはぎが1種ずつポンポンッと8個並んでいます。
こちらのお店を切り盛りしているのは、オーナーの森百合子さん。「私自身、食べることが大好きなんです。おいしい食べ物って食べるとしあわせな気持ちになりますよね。そういうしあわせになれる食べ物を作ることができるといいな、人をしあわせな気持ちにさせることを仕事にできたらいいなと思ったんです」と森さん。そんな思いをから「飽きが来ることなく幅広いお客様に食べ親しんでもらえる食べ物のあるお店をしたい!」と考えを巡らせ、「おはぎ」にたどり着きました。
定番人気のおはぎ3品。左から「深炒きなこ雑穀もち」¥126、「大納言雑穀もち」¥126、「くるみ黒米」¥179。
そこから素材を吟味し、餡を炊いて、生地を作り……という2年の独学を経て、オリジナリティ溢れるおはぎを考案。豆の風味を大切に、白ザラ糖ですっきりとした甘みに炊き上げた餡、ほどよい苦味を感じる深炒りきなこなど、素材も厳選。
また「毎日のおやつに食べてほしいから」と、ほどよい弾力とやわらかさを併せ持つ佐賀県のひよくもち米を使用する生地に、体にやさしい雑穀(もち玄米、もち粟、もち黍、発芽玄米、黒千石大豆、押し麦、もち麦、はと麦)や黒米をブレンドしたり、餡の甘みを押さえたりといった工夫も。お客様にとって、うれしいこだわりがたくさん詰まったおはぎが完成しました。
(左下)夏限定の「ずんだ黒米もち」¥170、(右上)新商品の「焼きとうもろこしもち」¥150。
ほおばった瞬間の香ばしい香りがやみつきになりそうな「深炒きなこ雑穀もち」(¥126)と北海道産大納言の餡とプチプチとした食感の生地が好相性の「大納言雑穀もち」(¥126)などの定番おはぎのほか、色鮮やかな枝豆餡が見た目にも涼しげな「ずんだ黒米もち」(¥170)、3年間の試行錯誤の末に誕生した、夏祭りをイメージした「焼きとうもろこし」などの季節限定品も人気。
「ずんだ黒米もち」の断面。黒米のプチプチとした食感が楽しい。
どれも小ぶりなサイズだから食べやすく、ついもう1個と手がのびそう。そのほか、本ワラビ粉に葛粉もブレンドした口溶けのよいわらびもち(¥200)も大好評。「おみやげに」とまとめ買いをされるお客様も少なくありません。
「店を構えて3年。老舗の和菓子店のように歴史があるわけではないのですが、誰もが懐かしく感じ、親しみやすい雰囲気の店づくりとほかにはない独創的なおはぎを作り続けたいと思っています」と森さん。そして「今後は、作りたてのおはぎをゆっくり味わえるようなイートインスペスのあるお店を……」とも。
店を訪れると、おばあちゃんやお母さんが愛情を込めて作ってくれたおはぎにほっこりとした昔を思い出し、そして斬新な素材や楽しい食感のおはぎにワクワクする……。懐かしくて新鮮な気持ちになれる1軒です。
店舗情報
プロフィール
いなだみほ
神戸岡本在住のフリーランスエディター&ライター。 お菓子、パンを中心に雑誌やウェブで執筆中。 好きなお菓子は、クラシックなお菓子、素朴なお菓子、物語のあるお菓子。 現在、自身のブログ「
miho a la mode 」では 東北地方のおいしくかわいいお菓子を取り寄せて「北国のおかし」を連載中。また、Webサイト「dacapo」の
Photo Gallery ではフォトグラファー坂上正治さんとのコラボによるweb写真展も。
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