パリ、サンジェルマン・デプレ界隈。今は美術館となっているドラクロワの旧家のある、ひっそりとした趣のあるフュルステンベルク広場に、先の4月、シュークリームの専門店“メゾン・デュ・シュー”がオープンしました。
最近のパリで、シューはマカロンブームの次に注目されているアイテム。たとえば、カラフルなミニシューだけを取り揃えた“ポペリーニ”、それに、元フォションシェフのクリストフ・アダムによるエクレア専門店“レクレール・ドゥ・ジェニ”など、枚挙にいとまがありません。
そんなブームの中、オープンしたのがこの店。オーナーは、2ツ星“ルイ・トレーズ”のオーナーシェフである、マニュエル・マルチネーズさん。パリで最も歴史あるレストラン“トゥールダルジャン”のシェフも務めていたことがあり、さらにMOF(フランス最高職人賞)も受勲しているマイスターで、1996年から“ルイ・トレーズ”を切り盛りしてきました。
この店をオープンしたきっかけは、お店の顧客であるジャン・ビュロさんからの提案だったそう。ビュロさんは、マルチネーズさんの素材感のあるフレッシュでエレガントな料理を信奉していたのですが、ミルフィーユなど質のよいクラシックなデザートも大好き。
そのフレッシュなクリームなどを生かしたパティスリーを作ったらどうか、という話が2人の間で盛り上がって、構想されたのがこの店だったといいます。
そしてドラクロワも愛した、とても美しい広場にこの物件を見つけて、アイディアが本格化しました。“フレッシュで質の高いミニシューを提供する”というのがこの店のコンセプト。
シューは毎朝、レストランのキッチンで焼かれます。一度に少量しか焼かないので、足りなくなるとまた焼き足されます。シューは、焦げる寸前にまでしっかりと焼き上げられた絶妙な焼き加減。生地の上にスペキュロスをのせて焼き上げられているので、シナモンのスパイシーな香りも風味にアクセントをつけてくれています。
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