コロナ禍によってストレスや疲れを感じやすい今の時期、特に季節の変わり目や台風などの天候の変化によっても、不調が強く出ることがあります。そうした不調は、放置すると悪化する恐れもあるため、何らかの対策は取りたいものです。
そこで今回は、産婦人科医によるPMS対策と、内分泌・糖尿病専門医による「不安疲労」対策の2つをご紹介します。
1.産婦人科医が教えるPMS対策
1-1.30-40代のPMSは精神的な不調が上位に
ツムラが2021年7月~8月、生理前に不調がある10代~40代の女性800人に対して行った、PMS(月経前症候群)に関する調査の結果、全体の50.9%が「PMSが重い」と回答しました。
また、10~40代の女性2467人に生理前に感じる症状を尋ねたところ、若い世代では「肌荒れ・にきび」(10代30.8%、20代30.5%)や「過食」(10代30.8%)などの身体的な不調が多かった一方で、30代以降には「焦燥感・イライラ感」(30代30.9%、40代24.3%)や「不機嫌」(30代25.4%、40代21.2%)など精神的な不調のほうが上位になっていました。
子育て中、PMSが原因で、イライラや不機嫌さを経験したことの方も多いのではないでしょうか。
1-2.PMS対策
この年代別の不調の違いについて、産婦人科医で、「のぞみ女性クリニック」院長の内山心美先生は、次のように述べています。
「診療現場でも10代~20代では腹痛や頭痛などの症状に加えて尋常性ざ瘡(にきび)の訴えが多い印象です。思春期以降は性ホルモン(特にアンドロゲン)の増加によりニキビの訴えは多くなります。また不規則な生活、偏った食生活にも陥りやすいことから過食が上位になっている可能性があります。
一方、30代~40代は、10代~20代に比べ、子育て中の方も多く、仕事、家事、育児に追われてストレスが増え焦燥感、不機嫌(イライラ)が高まる傾向かと思います。
コロナ禍が長期化していることで、自粛でのコミュニケーションの減少によるストレス、自宅にひきこもりがちとなり、家族との摩擦等が増えたりと、さまざまな要因もあり、PMSで受診される方は増えている印象です」(内山先生)
子育て中のママとしては、PMSの不調は子どもや家族にも影響を及ぼすこともあり、きちんと対処したいですよね。では、どのように対処するのが良いのでしょうか?
内山先生はPMSの不調への対策について、次のように話します。
「PMSの症状でつらいときは医師に相談しましょう。日本には、『月経に関するトラブルは我慢するもの』と考えてしまう風潮が少なくありません。ツムラが行ったPMSに関する調査によると、PMSの症状がある女性の6割が『対処法を知らない』と答え、婦人科を受診する女性は1割以下しかいません。恥ずかしいという気持ちがあるのかもしれませんが、PMSによるイライラや焦燥感が強くなると、家族や職場の人間関係にも摩擦が生じ、場合によっては、退職や離別につながる恐れもあります。早めに婦人科などのお医者さんを受診することもお勧めします。
プレコンセプションケア(Preconception Care)という言葉があります。プレコンセプションケアとは、将来の妊娠を考えながら、本人・パートナーが自分たちの生活や健康に向き合うということで、WHOなど世界レベルでその重要性が叫ばれています。プレコンセプションケアでは、いかに自身のコンディションをベストな状態にするかが重要となります。そのためにも、PMSの正しい理解と対処法を知ることが重要です」(内山先生)
この先、妊娠を考える場合には、特にしっかりと不調と向き合うことが大切と言えそうですね。
また、日頃から不調の様子を日記として記録しておくのもよいようです。
「受診するタイミングは、PMSの症状が出ている間に限らずいつでも大丈夫です。月経とそのときの症状を記録した『症状日記』をつけて持参いただくとよりスムーズです。診察内容は問診が基本で、必要に応じ経腟超音波断層法などの内診をする場合もあるので、月経中は避けたほうが無難かもしれません。内診に抵抗がある場合など、不安があれば医師やスタッフにご相談ください。
問診では、症状日記から月経周期との関係性を確認し、疾患への理解を深める『生活指導』や、漢方薬やピルなどを処方 する『薬物療法』が行われます。また、自分だけで悩まず、PMSについてパートナーを含めた家族に対し理解を求めサポートしてもらうよう、アドバイスも行いますので、まずは、医師に相談してみるという選択肢をとってみることをお勧めします」(内山先生)
毎月、PMSが気になる場合、一度は受診してみてもいいかもしれません。
2.内分泌・糖尿病専門医が勧める「不安疲労」対策
2-1.不安疲労とは?
最近、コロナ禍によるストレスや不安から、特に不調を感じていませんか? 実はそれ、「不安疲労」かもしれません。
「不安疲労」とは、パラミロン研究会の定義によると、「生活の変化によりストレス・不安を感じることが多くなり、何となくだるい・気持ちが重いなど疲労感を感じている状態」だとし、これは自律神経のバランスが損なわれている状態だと考えられるそうです。
パラミロン研究会が2021年9月、関東および関西エリアに住む20~70代の男女1,200人に、コロナ禍における不安と疲労についてのアンケート調査を実施したところ、今感じている不調は「意欲低下」「疲労感・倦怠感」「ストレスを感じやすい」といった精神的疲労に起因する不調が上位を占める結果に。
また、54.5%と、半数以上の人が「不安疲労を感じることが増えた」と回答しました。
内分泌・糖尿病専門医で、医学博士の久保明先生は、多くの人が感じている「意欲低下」「疲労感・倦怠感」「ストレス」といった症状は、まさに「不安疲労」の症状だとコメントしています。
そして、放置しておくと“うつ”に移行する危険性もあるため「不安疲労」を感じたら、早めに対処が大切だといいます。それは恐ろしいですね。
2-2.不安疲労対策
久保先生によると「不安疲労の正体は、精神的なストレスにより自律神経の機能低下にある」とのこと。そこで、次の対策が紹介されていました。
「過度に『不安疲労』を溜めないためにも、
・生活のリズムを一定にする
・不安要素となる情報を必要以上に見ない
・緊張を解くために適度に体を動かす
…など、自分でできる範囲で不安疲労を軽減する工夫をしてみるとよいと思います」(久保先生)
また、腸をケアすることも対策となるようです。
「脳と腸は密接に関係しているため“腸のケア”も有用だと言えるでしょう。腸は全身の“元気スイッチ”の役割を果たしています。日頃の生活の中で、腸を元気にすることを意識してみるのも一つの手だと思います」(久保先生)
また、不安疲労対策には、副交感神経の働きを促すことがポイントだとして、具体的な方法として、吐く息を普段より長めにする呼吸法、姿勢を正したウォーキングなどもいいそうです。
不安疲労を感じている人は、ぜひ、取り入れてみてはいかがでしょうか。
PMSの症状や「不安疲労」に心当たりがあれば、ぜひ対策を行って、元気で明るいママでいましょう!
【医師プロフィール】
内山心美先生
「のぞみ女性クリニック」院長 産婦人科医
昭和大学産婦人科学教室、各関連病院勤務、北里大学東洋医学研究所漢方研修生、昭和大学江東豊洲病院助教など を経て現職。「予防医学」「未病」の考えのもと、女性に関するさまざまな病気、トラブルを最小限にして笑顔で過ごしていただくことを願い、2020年9月に産婦人科、漢方内科の「のぞみ女性クリニック」を開業。日本産科婦人科学会 専門医 指導医、日 本東洋医学会 漢方専門医、日本女性医学学会 女性ヘルスケア専門医、女性ヘルスケアアドバイザー
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久保明先生
内分泌・糖尿病専門医/医学博士 慶應義塾大学医学部卒業。専門は予防医療とアンチエイジング医学。 銀座医院院長補佐・東海大学医学部客員教授・日本臨床栄養協会副理事長。 『カリスマ内科医と組み立てる DIY健康大全』 (晶文社)他、著書多数。
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