名デザイナー、フィリップ・スタルクによる内装のバーは、スタイリッシュかつ落ち着ける空間。
今回は、ピエール・エルメがパリにオープンした期間限定「バー・ショコラ」のレポートをパリからお届けします。
パリ・凱旋門からオッシュ大通りを日本大使館へ向かって歩いていくと、美しい赤い庇を掲げたゴージャスなホテルに行き当たります。1928年創業の由緒あるホテル「ル・ロワイヤル・モンソー」は、ラッフルズ・ホテル&リゾートのヨーロッパにおけるフラッグシップホテルとして2010年に大改装オープンをとげ、パリ中の話題となりました。
1930年代の旧き良きパリを現代に再構築し蘇らせたフィリップ・スタルク監修によるインテリアも大変評判で、エントランスを入って中央にあるラウンジバー「ル・バー・ロン」は、密やかな寛ぎの空間としてパリジャンが集う場所になっています。
凱旋門から大通りを歩いてほど近く。隠れ家的空間で、パリジャンにこよなく愛されている。
このホテルにはミシュラン1ツ星を掲げる2つのレストラン、フレンチの「ラ・キュイジーヌ」とイタリアン「イルカルパッチョ」があり、デザートを手がけるのはいずれもピエール・エルメ氏。さらに、エルメ氏が考案するヴィエノワズリー類、ヨーグルトなどが提供される朝食の華やかさは目を奪われるほどで、著名ジャーナリストが選考するアワード「プリ・ヴィレジアチュール 2014」でも「ヨーロッパいちの朝食をサービスするホテル」として受賞しています。
さて、ラウンジバー「ル・バー・ロン」に話を戻しますと、ここではさまざまな期間限定のイベントを開催しています。2014年11月〜2015年3月31日までの期間限定の冬のイベントは、ピエール・エルメ氏による「バー・ショコラ」。エルメ氏は、チョコレートも自分のクリエーションにインスピレーションを与えてくれる大切な素材だとよく言っています。そんなエルメ氏がこの期間限定イベントのためだけに準備したクリエーションを楽しめるというというのですから、まさにスペシャル感に溢れています。
マンジャリ、アラグアニ、カライブのミニタブレット、プラリネのボンボンをまずはテイスティング。
店内に入ってバーカウンターに座り、バー・ショコラを楽しみに来たと告げると、ホール係がチョコレートボックスを運んできます。箱の中には「マンジャリ」「アラグアニ」「カライブ」の一口サイズ板チョコレート、そしてヘーゼルナッツ・プラリネのボンボンが入っています。前者3種はヴァローナ社由来のチョコレートで、マンジャリはフルーティ、アラグアニはナッツの香り、カライブはドライフルーツの香りが立つ、それぞれ個性的な味わい。いずれも「バー・ショコラ」のためにエルメ氏が選んだチョコレートです。
客はそれぞれのチョコレートをテイスティングし、気に入ったフレーバーから好みのデザートを選べるという、気の利いたプレゼンテーションになっています。
各チョコレートの味わいとそれに合わせたフレーバーのハーモニーが絶妙な3種のグラスデザート。
例えば「グラスデザート 3種のセット」では、3種のチョコレートそれぞれについてマリアージュを味わうことができます。「マンジャリ」のチョコレートクリームには、マンジャリ風味のシャンティイクリーム、さらにバルサミコのジュレ、フランボワーズを合わせて。「アラグアニ」の温かなガナッシュに、アボガドとバナナ、パッションフルーツのコンポート。そして「カライブ」のチョコレートムースにフレッシュミントのグラニテ。エルメ氏による素晴らしい組み合わせで、チョコレートの味わいの無限大な楽しみ方を知らしめしてくれるようなクリエーションです。
そして、香りだけでなく、ムース、ガナッシュ、クリームなどのテクスチャーの違い、さらに温度の違いなどの演出にも驚きがありました。